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福祉現場やものづくり現場、福祉関連施設やイベント等を訪問して皆さんにご紹介するページです。福祉の現場の声から、気づきやヒントを「コーディネータの視点」で汲み取り、福祉環境の改善へとつなぎます。
訪問日:2010年10月13日  訪問先:介護アイデア工房

東武線竹ノ塚駅からバスで10分ほど行った足立区花畑の住宅地の中に建つ大きなガレージのような建物、それが野中清次さんの介護アイデア工房です。野中さんは、「こんな福祉用具が欲しい」という注文に応え、その人に合った製品を作っています。設計から製作、納品まですべて一人でやっており、大量生産はできない分、各人各様のリクエストに細かくこたえたオーダーメイドの製品を作ることができます。

野中さんが介護用品製作の仕事を始めたのは5年前。元は自動車の板金塗装の仕事を長年やっており、現在の工房もその時の工場をそのまま使っています。「鉄板1枚から車の扉を作れる」という腕前で、ワゴン車を改造してキャンピングカーを作ったり、釣り好きが高じて和竿を作るのにこったりと、根っからの職人気質です。

工房での野中さん。いろいろな物があって、おもちゃ箱をひっくり返したよう


そんな野中さんが介護用品を作るようになったきっかけは、お母さまが片麻痺になり車いすを使うようになったことでした。お墓参りに行きたいというお母さまを連れて行こうとしたのですが、車いすではお寺の砂利道を進むことができません。いくつかの車いすメーカーを回りましたが、砂利道も走行できる車いすは見つかりませんでした。ならば作ってしまえ、と生まれたのがどこへでも行ける車いす「てだすけくん」です。これは、従来の車いすにアームを付け、そのアームを前に持ってくることで、車いすを押すのでなく引くことができるようにした人力車式の車いすです。「前から引くことで、力の負荷が少なくてすみ、坂道でも後ろに転倒する心配が無く、前輪を持ち上げることもできるので、砂利道や芝生などのでこぼこ道でも楽に進むことができる」と野中さん。アームは折りたたんで収納できるので、普通の車いすのように後ろから押して使うこともできます。私も引かせてもらいましたが、後ろから押す時は腕の力を使っているのに対し、前から引くと腰を使い、楽に引ける感じがしました。

アームを伸ばした状態。高さを調節して固定できる。

  介護アイデア工房では、その他にも、車いすに付ける雨よけや日傘、背もたれの角度が調節できるシャワーチェアなど、多種多様な製品を製作し、車いすのパンクなどの修理も請け負っています。野中さんに来る相談は、大手メーカーはじめあちこち当たったけれど希望に叶ったものが見つからなかった、あるいは断られたという相談ばかりです。大手企業や既存の製品でカバーできない部分を自分の腕一本でこたえる気骨の職人、野中さんは利用者の立場から考えている作り手なのでした。

介護アイデア工房の主力ラインナップ。
左から、雨よけ付き車いす、日傘付き車いす、てだすけくん。


介護アイデア工房のホームページ http://www9.plala.or.jp/kaigoideakoubou/

◆コーディネーターの視点
「違う角度で見る、利用者の側から見る。そうすれば、やれることは沢山あると思うよ」という野中さんの言葉が印象的でした。また、車の修理の世界でも職人がいなくなったという野中さん。優れた技を持ったベテランがいても、仕事が減って若い人が入って来なくなり、技術が継承されないという構造は、あらゆる分野、地域で見られるような気がします。私たちが、利用者の視点に立って真の要望を見つけ、それを叶えられる技術に結びつける役割を果たして行きたいと思います。(吉田)
[ものづくり関連:]

正田忠広(家族介護者)
母が、脳梗塞で半身不随になり、リハビリでなんとか杖歩行はできますが、ソファーに座ると、沈み込み自分で立つ事ができません。髙い椅子からは自分で立てるのですが、髙い椅子では姿勢が不安定で長時間座っていると足が疲れてきます。ソファーだと長時間リビングで過ごせるのですが、自分で立てません。 よく、ニトリさん等で販売している、ソファーで電動リクライニングするものがありますが、あれを、電動ベッドのようにソファー自体が上下するように、かつやや前傾になるように動くようにして、立ち座りが楽に、自分でできるようになり、リビングにおいて家族との団欒の時間が増えます。
投稿日:2014年3月21日

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