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福祉現場やものづくり現場、福祉関連施設やイベント等を訪問して皆さんにご紹介するページです。福祉の現場の声から、気づきやヒントを「コーディネータの視点」で汲み取り、福祉環境の改善へとつなぎます。
訪問日:2011年07月19日  訪問先:http://www.shoukichi.org/kitazawa/

 20091月に「日中おむつゼロ」を達成した世田谷区立きたざわ苑は今、もパワーリハビリう一つの挑戦に取り組んでいます。一つのベッドを複数の利用者が期間をずらして交互に利用するベッドシェアリングです。これは入所待機者の解消を目的に、2006年度より始まった「在宅・入所相互利用」制度で、要介護3以上の利用者に、3か月を限度として一つの部屋を交代で利用してもらい、施設と在宅で交互に過ごしてもらう仕組みです。住み慣れた家とのつながりを保ちつつ、入所施設が確保されているという安心感のある在宅ケアを実現し、利用者のQOLADLの維持・向上を図ろうというものです。

 

 きたざわ苑ではベッド現在100床のベッドのうち8床をベッドシェアリングに供し、 15名の方々が利用しています。施設で2ヶ月ほど自立訓練をして在宅に戻り、数か月してまた施設で生活を送って、自宅に戻る。在宅で自立が充分確保されるようになれば、施設に入る必要もなくなります。きたざわ苑では最初の入所時に「2ヶ月後に入所者がどのような状態まで回復するか」という明確な目標を立て、ケアプランを練ります。在宅に戻ってもらうためには、おむつもはずしますし、寝たきりも止めさせます。そして自分の足で歩くようになってもらうのです。また自宅に戻った後も、入所中に関わった介護職員が利用者宅を訪問し、在宅生活を見守ります。

 

 この制度は、施設側にとっては入所者の期まつり間調整の難しさがあり、利用者に とっては在宅期間のケアの問題など、運用面の難しさがあります。しかし、現時点での全国の特養待機者数は42万人、今後ベビーブーム世代が後期高齢者となれば、入所希望者数はさらに増大します。いくら作っても、施設も職員も足りない…ベッドシェアリングは施設を増やさなくても、収容者数を増やすことができます。1つのベッドを3人でシェアできれば、ベッドが2床増えたと同じことになるからです。現在全国に6000を超える特養がありますが、各施設がその10%をベッドシェアリングすれば、今の施設が1200施設増える計算になります。

 

 特養を「終の棲家」と位置付けているうちは、この数字は絵に描いた餅ですが、介護を「現状維持」から「自立回復」へと発想転換すれば、実現可能な数字です。自立支援介護を実践し、利用者を元気にするきたざわ苑の「おむつゼロ運動」と「ベッドシェアリング」の取組みが、日本の多くの施設で実現し、さらに改良された取り組みが行われる日が待ち遠しいと感じた「きたざわ苑」訪問でした。

(訪問記おわり、次は番外編「トイレでふんばる君」です)

◆コーディネーターの視点
自立支援はかわさき基準の理念でもあり、私たちJプロジェクトの目指す方向でもあります。Jプロジェクトで取りかかっている新規開発品が「絵に描いた餅」に終わらないよう、自立支援にしっかり向き合いたいと思いました。
[福祉関連:]


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