小田急線東北沢駅から歩いて10分ほどの住宅街に特別養護老人ホームきたざわ苑は建っています。
平均要介護度4の高齢者が125名(うちショートステイ25名)入所しているきたざわ苑は2009年1月に「日中おむつゼロ」を達成し、今日までの2年半の間、それを維持しています。施設長の岩上広一氏は「利用者の本当のニーズを考えて取り組んだこと。利用者の本音*1はやむを得ず施設に入ってくる、施設に住みたいわけではないのです。トイレ介助も受けたくない」と言います。だから「排泄を自分でできるように援助する」のだそうです。きたざわ苑に入所した、おむつ着用の高齢者は、入所初日におむつを外します。そんなことをしたら漏らしたり、汚れたりして大変ではないか?職員の負担が増すのでは?と思います。ところが入所当初から漏らさなくなる方も多いそうです。
「水、飯、便、運動です。起床時の冷水と1日1500㏄の水分摂取、食物繊維の豊富な常食の食事、下剤の廃止、決まった時間の座位での排便、運動そして規則正しい生活。これらが入所者の自立的な排便を促進します」と岩上施設長は言います。
きたざわ苑の自立支援はおむつだけではありません。「5秒以上つかまり立ちができる人には歩く能力が残っている。歩けないのは歩かなかったために歩くことを忘れただけなのです」と、介助して立つ、歩行器を使って歩くことから始め、やがては屋外へ散歩に行けるようになるまで援助してゆきます。岩上施設長は「当然転倒のリスクはあります。歩けるようになれば転ぶこともある。それは入所時に、家族の方に十分説明し、理解してもらいます。1月後2月後3月後と、目に見えて自立度が上がってゆく利用者の姿に多くの家族は感激する」と話します。何よりも入所者本人の生きる意欲が出てくるのだそうです。
施設入所者全員のおむつを外す「おむつゼロ運動」・・・これは国際医療福祉大学大学院教授の竹内孝仁氏が提唱し、多くの賛同者を得て実践されている取組みです。現在までに「おむつゼロ」を達成した施設は20か所。全国には6,000を超える施設がありますから、1%にも満たない数字です。しかし、公益社団法人全国老人福祉施設協議会が主催する介護力向上講習会で1年間講習を受けながら*2多くの施設が今年もこの取組みを始めています。(続く)
注)*1:2011年3月にかわさきJプロジェクトが元住吉ブレーメン通り商店街で開催した「ジャンプアップ福祉フェア」での来場者アンケートでも“あなたが将来、介護が必要になった場合、どのような形の介護を望みますか?”に対して「在宅で」が55.3%「施設で」が29.4%「有料老人ホームで」が11.8% と施設に住みたい人は少数派でした。
*2:2011年度は全国から152施設、370名の方が勉強を始めました。
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